ある地方の小学校で、教室での行儀が悪く成績も良くない男の子が、先生からいつも「君は駄目だ」といわれていた。
あるとき母親が先生にこういったという。「先生は駄目だ、駄目だというけれど、あの子は野良仕事は手伝うし、弟や妹のめんどうはよくみるし、あんないい子はいないですよ」と。

学業成績だとか生産性の高さだとかいうのは、やたらに忙しい超過密列島に住む競争社会民族ならではの価値基準であって、必ずしもすべての国の人々に共通する普遍的な価値基準ではない。
日本人が外国でビジネスをし、外国と上手くやっていこうと思ったら、先方には先方なりの価値観とプライドと生き方のペースがあるのだという大前提をしっかりと認識し直すことが大事ではないか。

柳田邦男「事実の素顔」より