日経ベンチャー 2005年10月号より

〜亀裂が生じるのは”必然”だ〜
「最悪の事態」を回避するために

莫逆の友、右腕と思っていた幹部から、突然、眼前に突き付けられた辞表。「裏切られた」と思うのも無理はない。
しかし、それは本当に「裏切り」なのだろうか?
そもそも経営者と幹部の亀裂は、なぜ生じるのか。コンサルタントなどの識者に尋ねたところ、各人の主張には一つの共通点があった。それは、「企業にとって、経営者と幹部の亀裂は”必然”だ」ということである。

企業の成長段階に伴い意見の相違が浮き彫りに

ボストン コンサルティング グループの菅野寛ヴァイス・プレジデントは、「まず、経営者と幹部の意見の衝突は歓迎すべき」と指摘する。
元々、創業に関わる人々は自己主張が強い人間が多い。ベンチャー、中小企業が大手と同じ事をしても勝てるわけがない。だからこそ、経営陣は会社の方向性について侃々諤々の議論を戦わせる。そのため、意見の衝突は必然的に起こる。
もちろん、最後の決断は社長の仕事である。しかし、この決断自体が亀裂を生む種となる。
「経営者の決断は『アーティスト』の側面があり、論理を越えた判断が正しいことも多い」(菅野氏)
いわば「理外の理」。これを論理で説明できないところに、周囲の不満がくすぶる。
特に、会社の成長が節目を迎えた時に、亀裂は入りやすい。例えば、会社が大きくなり、組織経営にシフトした経営者と、今まで通りの幹部といった構図。幹部には自分が遠ざけられ、社長の人格が変わったように見える。
「以前と今ではやるべき事が違う。『企業の成長ステージ』という概念を導入しないと、経営者と幹部の衝突が収拾不可能になる」と菅野氏は語る。

甘く苦いは教祖業の味。
そして意見が経営者寄りになるのはコンサルタントの宿命。